タケルが『シュミレイションチャット』ルゥムに入室した時には、
既に二番目の息子の彼女と上の娘が談笑していた。
誰姉 : お母さん、お帰りなさい。
誰♀ : おじゃましてま〜すv
誰母 : 只今。
ところで誰弟は?何時もこの時間には居るでしょう?
誰♀ : 中間テストだそうですよ。
そう言われて思い出す。
そう云えば中学一年の一番下の息子は本当は中学三年生で、
自分も其の頃には試験や補習に追われていた。
誰母 : そう言えばそんな時期だったわね。
誰姉 : お母さんもこの時期やってた?
誰母 : 試験?受験もあったしねぇ・・・大変だったわよ。
誰♀ : 誰姉さんもそろそろじゃありませんか?
誰姉 : 私はもう終わったわ。
それより、その『誰姉さん』って何か変じゃない?
誰♀ : え・・・?そうですか??
誰母 : 確かにちょっと他人行儀よね。
誰♀ : じゃあ・・・『お姉ちゃん』・・・とか?
誰姉 : そっちの方が、何か、いいな〜。
誰♀ : うん。これからはお姉ちゃんって呼ぶね。
誰姉 : 口調も親しくなったね〜。
誰♀ : エヘヘ・・・(*゚ー゚)>
誰母 : 私も「お母さん」とかで良いわよ。
誰♀ : ・・・なんか・・・ウレシイかもv
自分が大学生で、しかも男だと云う事など、すっかり失念してしまう。
此処の『家族』を見ていると、本当に自分が『母』であるように思えてくる。
現代に措ける病気の一種かと言われれば、其の通りかも知れない。
しかし、悪い気はしなかった。
不意に部屋のドアが開く音がした。
同居人が帰って来たのだ。
出迎えの言葉を口走り、タケルは急いで『外出』の挨拶をキィボォドに打ち込んだ。