「レイル、」 「え、」 銀臼は良く見知った友人の名を呼んだ。積もりだった。 「誰、」 Δ 萌え立つ 過ぎ越しの 双丘 雷鳴が低く轟いていた。革の甲冑に降り注ぐ雨。ぬかるむ足場。 空を見上げると一面にスレートの雷雲が立ち込めており、銀臼の顔にも雨粒が弾ける。 『銀臼』の顔面には。 「銀臼、」 ふと、聴き慣れた声がした。本当に聴き慣れた声だったら、と思い乍ら、振り返ると見知った顔があった。翠だ。 『翠』は未だ見慣れてはいない。 「ねぇ、ミドリ」 「ですから、スイと御呼び下さいって、何度云えば分かるんですか、」 アイヴィの睛が笑う。良かった。此れは『ミドリ』だ。間違いなく。見慣れた。 「レイルって、誰だっけ、」 「貴女と同時期に冒険者になった双剣士さんですよね」 「そうだけど」 云い掛けて、少し、変だと思った。 「レイルって、」 同時期に、ではない。一緒に冒険を始めたのだ。『ミドリ』に薦められ、『翠』に手を引かれて。 「巻葵だよね」 「え、」 「マキ、アオイ、だよね、二年一組の、吹奏楽部の、」 「銀臼、」 「保健委員で国語が得意で小学校からアタシと一緒でミドリとも一年の時から友達だった巻葵のPCだよねっ」 「銀臼っ」 息が荒れる。『銀臼』も『片岡美久』も。 「落ち着いて下さい、銀臼」 ああ、ミドリはこんな時にも冷静だ。だから頼りになる。 そしてきっと、レイルについて、アオイについてアタシの望む一番の答えを呉れる・・・ 「何を云っているのですか、レイルさんはレイルさんで、他の誰でもありません」 「え、」 「それに私もスイですよ。一体如何したのですか、銀臼」 「嘘、ミドリ、」 「貴女も、銀臼になりなさい、ミク」 「銀臼、に、」 「そうですよ」 「始めまして、翠と申します」「あ、はい、始めまして」「なんてね、緑子ですよ」「何だ、ミドリか」 「ああ、お願いしますからスイと呼んで下さいね」「何で、」「此処での名前だからですよ」 「別に良いじゃん、中身はミドリなんだから」「なら貴女の事もミクと呼びますよ」「ゴメン銀臼でお願い」 「では改めて、始めまして銀臼」「始めまして、翠」「アオイはHN何にするんでしょうね」 「レイルじゃない、PNそうだし」「あ、ほら来ましたよ」「やっぱり、レイルっ」 ゲートから次々と人々が現れる。そして次々と人々が出て行く。 其の中に、陽光を反射するガンメタルの鎧とキャロットの革肩当てを見た。 しかし。

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送