「こんなトコに居て良いの、」 「え、」 θ まばゆき 魂の 道標 「ミドリだったら、もっとレベル高いトコ行けるんじゃないの」 レイルが双剣の手入れをし乍ら云った。砂漠の夜に浮かぶ月船が曇りなき刃鏡に映る。 「翠、ですって」 重槍を肩で支えた定番のポーズで翠は応じる。 「良いんですよ、今日は御二人の護衛に徹しますから」 「護衛、ねぇ」 銀臼も剣の整備の手を止めずに繰り返した。何時も通りの出立前。しかし。 「何かさ、最近物忘れが激しいんだよね」 「ボケた、」 「違うって」 磨き終えた長剣を一振りして鞘に収める。 チンッ、と快い音を鍔が立てて、しかし何処か納まり切らない靄の様な物が其処此処に溢れていた。 「物忘れって云うか、」 纏わり付くミンブルー。夜闇の網。 湿度は低いのにじっとりと肌に張り付く目の細やかな幕を突如引き裂いて、剣撃が三人を襲った。 「刹那さん、下がってっ」 砂丘の上から高い声が響く。瞬間、雷光。 アッズロのスパークが爪牙を立てる。ミンブルーの夜とエクリュの砂塵が絡み合う向こうから、再び鋼の剣が振り下ろされた。 「戦闘態勢」 アイヴィの睛を細めて翠が呟く。銀臼とレイルも慌てて剣を構えた。 「っつっても相手見えないよっ」 「取り合えず伏せて下さい」 「何、で、」 銀臼が振り向くと、翠は携帯していた巻物を広げていた。ピスタチオで書かれた墨文字が紙面から剥離し、空気に紛れて膨張する。 「吹き飛ばします」 「何をっ」 「色々と」 風刃が、舞った。 睛の前が真っ暗になった。と云う事は、視界が開けたのだ。 左前方でキャロットの影が魔導師に向かって疾走する。レイルだ。後方に気配を感じて、銀臼は刃を突き出した。 「お強いですね」 アリス、と名乗った呪文使いの少女が、微笑み気味に云った。 「いや、保護者のお陰だよ」 レイルが首を傾げる。翠は五人全員にファラリプスを掛けた処だった。彼女のみ、顔色一つ変えていない。 「まぁ、此れでお互いワンポイントずつだね」 「此れから後何人もと戦わないといけないんでしょうね」 アリスが顔色を曇らせる。 「そう云うイベントなのだから、仕方がないだろう」 アリスとパーティーを組んでいた重剣士、刹那も溜め息を吐いた。 「サバイバルゲーム、倒した人数で情報ゲット」 要項を読み上げる銀臼。しかし頭は別の方向に向いている。 やはり何処かで。 「でしたら少し手伝いましょうか、」 翠が笑う。 「いや、いいよ」 「では、私達は此れで」 「あ、うん、又ね」 「はい、又何処かで」 「世話になった」 「いえいえ、御気を付けて」 「有り難う御座います」 「ホラ銀臼、」 「ん、」 既に前方遙かで手を振る二人。急いで手を振り返してアイヴォリーに染まる影を見送るが、しかし頭は別の方向に向いていた。 やはり、何処かで。

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