「ハジメマシテ、僕は楓です」 「え、あ、はい、始めまして、」 Λ 試されし 朽葉色の すすり虫 派手に彩色されたブロンドの外跳ねのポニーテール。薄絹の法衣は。ドーンピンクで、手に持つ杖は召喚専用の高位の代物。 そして少し鼻に掛かった良く通る声をした彼女は、その少女らしい外見とは裏腹に一人称が僕、だった。 そのちょっとした違和感、しかしこの界隈では当たり前の違和感に、銀臼は首を傾げる。 「あれ、」 「何」 「どうしたの、」 パーティを組んでいたレイルとクラウスも小首を傾げる。二人の睛に何の疑問も浮かんでいない事を不審に思いつつ、銀臼は続けた。 「前にパーティ組んだ事、あるよね」 一瞬、沈黙。真昼の陽が剥き出しの土壌に照りつける。 「・・・僕、一応女ですけど、」 「逆ナンにもならないよ」 「と云うかどっちかって云うとさ、アンタの方が男だね」 「なっ、」 「それにしても、」 銀臼の反論が始まらぬ内に楓を向くクラウス。 「楓ちゃんは一人なの、」 そう云えば、と、今度は皆が楓に視線を向ける。一見した処、華奢な楓は冒険を始めて間もない様だった。 突端に精霊を象った黄金の装飾が施された召喚杖と身に纏うローブは確かに貴重な一品だ。 が、其の他、例えば三色布が編み込まれたリストバンドや爪先を覆わないサンダルは、明らかに初心者の装備である。 幾ら重装備の不可能な術師だと云っても、此処迄無防備な格好でこのエリアに出ると云うのも珍しい。其れも、一人で。 しかし楓は笑顔でこう云った。 「はい、僕、未だ慣れていないので」 「だったら尚更危なくない、」 「でも、メンバーに迷惑掛けられないから、慣れるまでって」 シャルトルーズグリーンとチャイニーズレッドとドーンピンクの睛が交差する。瞬時にして、チャイニーズレッドの其れが細められた。 「其れなら余計さ、」 「え、」 「パーティ、組もうよ」 レイルと銀臼の続け様の台詞に、楓のメイズの睛が円く見開かれる。 「え、」 「強いよ、私達」 クラウスが朗々とした声を上げた。三人を見回す、楓。 傾斜の少ない台地に風が駆ける。四人分の足跡と共に、以前何処かで、と云う銀臼の思いも吹き消されていった。

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