「あれ、ミドリ、」 「スイです、翠」 Λ 空疎なる 絶望の 満ち引き 高山都市の広場に女冒険者が七人勢揃いしていた。 剣士銀臼、双剣士レイル、呪文使いアリスのパーティに加えて、剣士クラウス、重剣士刹那、呪文使い楓の、 今日此処で落ち合う約束をしていた六人。そして約束はしていなかった筈の、重槍使い翠の七人である。 時刻は八時を少し過ぎたところで、しかし空は依然として晴れ渡っている。 「ひっさしぶりだね、病院は如何したの、」 銀臼が翠の顔を覗き込んで訊く。翠の顔は何時もより蒼く窶れ気味で、 その名の通りジェードグリーンをした髪が生気の少ない額に簾掛かっていた。 「御医者様から三十分丈と御許しが出たんです」 「病院、」 ブーゲンビリアの癖毛をぴょん、と揺らして、クラウスが首を傾げた。睛のドーンピンクに疑問符が浮かび上がる。 「あぁ、クラウスサンは知らなかったんだっけ」 楓が身長程もある召喚杖を器用に手先で回し乍ら云った。高い位置で結った細いブロンドが、発生した微風で揺れている。 「翠サン、病気だって」 「入院してるんだよ」 レイルが続ける。 「この前私と銀臼でお見舞い行ったんだよね」 「そうそう、結構元気そうだったから良かったんだけど、」 其処で銀臼はちらりと翠を窺い見た。 「でもホント大丈夫、」 その問いに、微笑む、翠。 「大丈夫じゃないから三十分なんです」 背景で鳥が一斉に飛び立った。夜も照る太陽を白い影が遮る。一同其れを睛で追って、暫く、ほんの数秒沈黙が続いた後、翠が口を開いた。 「さ、折角集まったのですから、行きましょうよ」 「そうですね」 「OK」 静けさに耐えかねたアリスと楓が即座に賛同する。 「じゃ、刹那、宜しく」 「分かった」 今迄無言を通してきた刹那が言葉少なに頷いてゲートに向かう。腰まで伸びた漆黒の髪が侍風の鎧を掠めた。 「何処が良い、」 「時間がないので階層の少ない所で」 「敵が強いトコっ」 「で、宝箱沢山在る所っ」 「つかパーティ如何すんの、」 「三人、二人、二人で良いでしょう」 「雪が見たい」 其々が其々好き勝手を零す。刹那は一通りのざわめきの後溜め息を吐いて、呟いた。 「Λ 空疎なる 絶望の 満ち引き」 「え、ちょっと待って、未だパーティ組んでない、」 銀臼の抗議の声は又もゲート前から掻き消えた。人通りの減った広場には、鳥の群れが舞い戻る。

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