キャスト・・・OL
                  少年達
                  人々
                  少女
                  声
 
 

             緞帳開く。


             子供の声がする。

           少年達  やーい。
               キツネ女ー。
                   コーンコーン。
                   やべっ、食われるぞ。
                   キツネ女に食われるぞ。
               呪われるぞ。
               とり憑かれるぞ。
                   逃げろー。
                   逃げろー。
                   コーンコーン。
                   コーンコーンコーンコーン。

             少年達、四方に走り去る。
              少女が一人立っている。
              頭に乗せていた狐の面を外し、歩いてハケる。

           声   大切にしなさい。これはお守りだからね。

              やがてお囃子が聞こえてくる。
              OL登場。わたあめの袋を持っている。

           OL   わたあめなんて何年ぶりだろ。それに今日お祭りだったなんて知らなかった。

             OL、腰掛ける。

           OL   中学の時ぐらいに、もっとおっきい祭りと一緒になったんじゃなかったっけ。
                 復活したのかな。珍しい。

              言いつつわたあめの袋を開け掛けて、手を止める。

           OL   これってホントに砂糖のカタマリなんだね。
               作ってるトコなんて気にしたコトもなかったけど、アレ見ちゃうとちょっとなー。
                 ・・・でもゴハンもまだだし、ちょっとくらいいっか。

              OL、わたあめを袋から出し掛ける。
              其の前を、太った子供がわたあめを食べながら通り過ぎる。
              それを凝視するOL。

           OL   ・・・やっぱり明日にしよ。

              OL、わたあめの袋の口を縛ろうと奮闘する。
              其の前を、赤い浴衣の少女がとぼとぼと通り過ぎる。
              少女が自分の真ん前に来た時、初めて少女に気付いたOLは、
              しばし少女の後ろ姿を追って小首をかしげる。

           OL   あの浴衣、

              其の時、ずっと流れていた曲が音量を上げる。
              いつの間にかお囃子から盆踊りの曲に変わっていた。
             踊りに参加する様促す放送も掛かる。

           OL   このカッコで踊れって言われてもねー。
                 あ、でももしかしたら誰かいるかも。

              OL、立ち上がり、ハケる。

           声   お稲荷さまが、私の代わりにいてくれるからね。

             紺や白の浴衣の人々が四方から集まって、辺りは騒然とし始める。
              少女が歩いて来る。手には狐の面を持っている。
              辺りを見回して、急いでそれを物陰に隠し、走り去る。
              その物の周りに人々が輪になり、踊りが始まる。
              OL、ハケたのと反対方向から登場。

           OL   あ、アレはー・・・違った。似てるのに。
                 ああっ、アレ・・・も違った。似てもないや。
                 中々いないモンだね。
                 ・・・まぁ、当然か。皆もう子供じゃないんだし、踊り保全会って歳でもないし。

              少年達、OLが現れたのと同じ方から登場。
              踊りの輪をするりとくぐり抜けて、中央の物蔭から狐の面を取り出す。
              何やら仲間同士で笑い合った後、面を持って踊りの輪をくぐり抜け、来た方とは反対にハケる。
              OL、その様子を驚いて見ている。

           OL   アレ、

              OL、追いかけようとするが、踊りの輪に阻まれて通り抜けられない。
              その内曲が止まり、一旦休憩の放送が入る。
              輪は崩れるが、少年達を見失う。
              OL、仕方なく中央の物のところに向かう。
              少女、少年達がハケた方から登場。
              OLより早く中央の物に到着し、その蔭をあさるが、
             探し物が見付からないらしく、やがて走って立ち去る。
              OL、それを見ている。

           OL   あの子、

              OL、少女を追い掛ける。  再び踊りが始まる。

           声   ひとつだけ、約束しておくれ。

              少年達、登場。

           少年達  コーン。
                   コーンコーン。
                   このお面気味悪いコーン。
                   怖ぇコーン。
                   呪いのお面だコーン。
                   悪い子はいねぇかー。

             少年達、笑い合う。
              しかし段々ふざける調子が落ちていく。

           少年達  あいつ、なんでこんなモン持ってんだコン、
                   きっと狐の使いなんだコン。
               こえー。
               こえー。
                   でも狐ってカミサマなんだろ、
                   カミサマ?
                   おいなりさん。
                   カミサマなの?
                   お寿司じゃないの?
                   ばーか、食いもんじゃねーよ。
                   じゃああいつ、カミサマの使いなの?
                   んなハズないだろ。
                   じゃあ何でこんなモン持ってんだよ。
                   そりゃあ、えっと・・・
                   ・・・・・・
                   ・・・・・・・・・
                   でも、あいつ、これ凄い大事にしてたよな。
                   きもちわりー、
                   何でだよ。
                   知らないよ。
                   でも、
                   ・・・・・・
                   ・・・・・・・・・
                   ・・・返してやろうぜ。
                   でもあいつ、オレ達が取ったって知らないんだぜ。
                   じゃあ戻しとこうよ。
                   うん、戻しとこう。
                   戻しとこう。
                   戻しとこう。

              少年達、駆けて行く。
              OL、何時からか少年達の話を聞いていて、少年達の後を追う。

           声   きっと、忘れないからね。私の、可愛い、

              しばらくして少女が現れる。うつ向いている。
              OL、反対から登場。わたあめの袋と狐の面を持っている。

           OL   ねぇ、

              少女、顔を上げる。
              OL、少女に面を差し出す。

           OL   大切なんでしょ。

              少女、OLから面を受け取る。

           OL   からかわれたって、取り上げられたって、ずっと持ってたじゃない。

              OL、少女と目の高さを合わせる。

           OL   好きだったんでしょ。なのに、何で諦めちゃったの。
                 大切、なんでしょう。
                 大好きなおじいちゃんがくれたお守りなんでしょう。
                 なのに、なんで、

              OL、段々泣き崩れていく。
              少女、OLの肩に触れる。

           OL   なんで忘れちゃったの、
                 なんでなくしちゃったの、
                 なんで諦めちゃったの、
                 なんで、なんで忘れちゃってたのよ、私、

              少女、OLを抱き締める。
              OL、段々落ち着く。
             少女、OLに面を手渡す。

           少女   思い出してくれたね。
           OL   え、
           少女  ありがとう。

             少女、いつの間にかいなくなっている。
             OLの手には、汚れて破れた狐の面。
            OL、立ち上がる。

           OL   ・・・ありがとう。

            OL、わたあめを食べにかかりつつ、歩きだす。
             遠くからお囃子が聞こえる。



              緞帳閉まる。




            補足

            BGM:新居昭乃『OMATSURI』
            少女=声、でも可。




































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