「まさか本当に郁野だったんだ」
玲はまだ信じられないというように2,3度瞬きをする。
「だれ?」
愁が玲に聞く。
「あっ、そうか愁と郁野とは初対面だもんな。こいつは郁野葵夏って言って同じ委員会なんだ」
「郁野葵夏です。よろしくね」
「・・・萩原愁です」
玲が葵夏を紹介し、2人があいさつする。玲が素朴な疑問を口にする。
「そういえばなんで郁野は愁の名前知ってんだ?初対面だったはずだよな?」
それを聞き葵夏が驚いたように、
「2人共知らないの?浅校では有名なんだよ?」
「「全然」」
声を合わせ言う2人。見事にハモってしまったので、練習でもしたんじゃないかと思うほどだ。
「ちなみにどんなウワサ?」
玲がワクワクという感じで葵夏に聞く。
「天に愛されし見目麗しの皇子と」
玲を指差し、それから愁を指差す。
「華麗なる微笑みの貴公子」
2人共ピシッという音をたてて固まる。
「他にもあるよ。えーっと・・・そうそう」
それから20分間ほど葵夏はウワサを話続けた。
内容としては、玲の手料理話や愁の頭脳は東大レベル話などなどでるわでる。20分間話してもまだあるようだった。
「な、なんだぁ」
そう言いつつも、玲も愁も身に覚えがあるようだ。あの時のとかそういえばとか呟いている。
「ウワサを広げた人も知ってるよ」
「「だれ!!」」
「新聞部の草下くん」
沈黙が流れた。ほんの数秒後。

「あいつかー!!」

不意に2人同時に叫ぶ。
「あいつならやりかねない!」
「毎度毎度勝手な事言いやがって・・・!」
葵夏はただボーゼンと見守る事しか出来ない。
「ワザワザ1人1人否定するこっちの身にもなってくれ・・・!!」
「あんな記事を信じる方も悪いけど、書く奴はその3倍悪い!!」
ギャイギャイと2人がわめく。いつの間にか草下に対する文句からウワサについての話になっている。
このままでは一向に話がまとまらない。
「あの〜そろそろココについて話していい・・・?」
葵夏が遠慮がちに言う。とたんにピタリとしゃべるのを止める。
人前で取り乱して恥ずかしいのか、ほのかに頬が朱くなっている。
「蒼樹は別としても、萩原クンが取り乱す所って始めて見た」
「・・・悪い」
「いや、別にあやまる事ないんじゃない?」
葵夏が笑う。
「・・・サンキュー」
そういって愁は微笑む。
(必殺!爽やかな微笑み!!)
玲は愁を見て思う。愁の笑顔はやはり完全無敵!なのだと。
勿論葵夏だって、この笑顔に当てられれば無事ではないだろう。

どきん

(えっ・・・)
何だろう、今のは。でもまだどきどきしている自分がいて、葵夏は動揺する。
しかし愁はその事に気付いていないようだ。
「郁野?」
どうした、というように愁が顔を覗き込む。
「ううん、何でもない」
「そうか?ならいいんだが」
なんとも言えない表情の愁。対照的に玲は楽しそうだ。
「それよりも、此処がどういうトコなのか考えない?」
葵夏が話を戻す。
「そうだな。何でこんな場所に」
「ティアリー・テイル」
突然玲が呟いた。
「はぁ?」
「だからティアリー・テイルだよ。あのイキナリ送られてきたゲームの名前」
「!!・・・あの自作のか」
「そう。郁野もさ、何か招待が来たんじゃないか?メールか何かで」
「うん、友達のケータイに来てて、やってみようと思って」
頷く葵夏。
「オレ達も愁のパソコンに来てて、『YES』クリックしたら光が画面から溢れてきて」
「私の時もそうだった」
「気付いたら此処にいたというわけだ」
そう言って、愁は考え込む。何かが引っかかる。その何かがわからくて、イラつくのだ。
そして、ふと顔を上げ、固まった。
「愁?」
玲が愁に呼びかける。
「・・・れ」
「えっ?」
「走れ!!!」
愁はそう言うと走り出した。何事かと思えば、愁の見上げた方向から、沢山の人が走って来るのだ。こちらに向かって。
「うわっ、すご」
「そんな事言ってる場合じゃないでしょ!?」
残った2人も走り出す。
運動神経がずば抜けている玲はいつの間にか葵夏を抜かして愁の隣に来ていた。
「なんで追われてるの?オレら」
「しるかっ」
そんなもの分かるワケがない。彼らは、ついさっきココに来たのだ。
「ホントにこれがゲームなら、まずは説明だろ!?説明書読ませろっつーんだよ!!」
玲が走りながら悪態をつく。
「本当に何でこんな事に・・・」
何か意味があるはずだ。何か意味が・・・意味が・・・意味・・・此処にいる意味・・・。
走り続けて約5分。
「きゃっ」
走るのが限界だった葵夏が転ぶ。彼女の声で、愁は我に帰った。
「郁野!」
































 
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送