「さて、第一ブロックの対戦は全て終了いたしました。
 一回りして、第二ブロックへと進めてまいります。
 東ゲートからの登場は、少年剣士レイ・アオキ選手!」
司会の声が響きわたる。それを、リィールは固唾を呑んで見守っていた。
勝たなくたっていい。ただ、レイの事だ。無茶をして怪我を負ったりしたら・・・
「西ゲートからはタイトル保持者、ミラーノ・ラディックス選手です!」
一際大きな歓声に飲み込まれぬよう、少女はしかと目を見開いた。

剣を構え、向かい合う二人。
やはり、強い圧力が玲を襲った。
食堂の時よりも、控え室の時よりも、第一回戦のウォン選手よりも強いプレッシャーが。
(強い・・・)
そう、感じた。感じたというよりも悟ったと言ったほうが適切かもしれなかった。
肌がピリピリする。
「開始!」
プレッシャーを振り切るべく、地を蹴る玲。
振り下ろした剣をミラーノは剣の鍔近くで受け、横に払うと同時に蹴りを放った。
玲はそれを避けた―――つもりだった。
しかし、力は多少殺がれていたものの避けきれず、わき腹に喰らってしまっている。
(速い!)
避けるのに精一杯で、先ほどのように靴に何か仕込んであるか否かも分からなかった。
が、今はそれどころではない。そのまま後ろに引く玲。
だが思うように体が動かない。すぐに追い討ちがきた。

「あーもう!」
葵夏がいらだった声を上げる。
「さっきっから逃げてばっかじゃん。
 何やってんの玲ーー!!」
「最初の蹴りが効いてるんじゃないか・・・?」
立ち上がって叫ぶ彼女の隣で、愁は座ったまま苦汁の表情をうかべていた。
「おそらくは。
 直撃を免れただけマシでしょうが、もしかしたら相当・・・」
コーマも心配そうに試合を見詰めている。
コウとウルフは葵夏と一緒になって玲を応援していた。コウの腕の中でタロサもガウガウ言っている。
ライゼルはというと、玲が蹴られた時点で自分も気持ちが悪くなってしまい、完全に目を背けていた。
そしてリィールは、まだしっかりと玲の姿を目に焼き付けている。
しかし皆の心配の通りに、玲はどんどん防戦一方に追いやられていた。
そしてついに、ギィン、と音を立てて、
「っ!剣が、」
「落ちた・・・!」が

下から薙ぎ払われた巨剣の重圧に耐え切れず、アリューシャンはだいぶ後方に弾け跳んでしまった。
(あの剣を下から上に、って、どんな筋力だよっ!?)
もちろん取りに行かせてくれそうにもない。
それどころがミラーノは玲とアリューシャンの間に入り、更に玲を剣から遠ざける。
流石の前回優勝者にも、スピード自慢の玲相手では先ほどのように容易に間合いを詰めるのは難しいようだ。
しかしどちらが優勢かは一目瞭然。観客も、もはや玲の逆転には希望を見出せない雰囲気になっている。
だが、そんな中でも玲の闘志はくじけていなかった。
(くっそ、まだ一発も当ててねぇぞ・・・!)
玲はベルトに付けていたあるモノに手をかけた。少々卑怯だと思って使いたくはなかった手だが・・・
(こんなところで、)
「逃げてばっかで終わってられるかっ!!」

次で決める。
そう、思った―――瞬間、頬を何かがかすめた。
痛みが走り、温かい、血が流れる感触がする。

「あ゛ーーーっ!!
 あれ、アタシのナイフっ!?」

(当たった、か?)
よくは見えなかった。
が、伏せ気味のミラーノの表情が少し変わった・・・ように見える。
笑っているような。
次の瞬間、対戦者は顔を上げた。頬からの出血が襟元まで届いている。
そして瞬く間に距離を詰められた。あきらかに先ほどまでとは速さが違う。
巨剣を、喉元に突きつけられる。
「降参・・・」
しかし玲は、もはや恐怖も驚きも感じはしなかった。
「・・・するもんかっ!」


















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