食堂にもゴツめの集団が集結していた。おそらく皆大会関係者だろう。
「・・・ねぇお兄ちゃん、端の方に行かない・・・?」
「アタシもそれ賛成。」
「あんまり人がいるところで食べたくないよ。」
「オレも。」
「ガウ。」
の声に押されて、一同は一番奥のテーブルに向かった。
というか、最奥ぐらいしか席があいていなかったのだが。
ところが、そこには既に一人の先客がいた。
「あ、」
「あ・・・」
微妙にずれて、その先客と玲が同じ音を口にする。
肩にかからない程度の青い髪に緑の軽装、切れ長の目。
やはり大会出場者なのだろう、傍らに剣を携えたその青年もまた、食堂に下りたばかりらしかった。
ほとんど手をつけていない料理がテーブルの上にある。
「すみませんが、相席させて頂いても宜しいでしょうか。」
コーマの問いに「あぁ」とだけ答えて、広げた皿を更に端に寄せる。
長テーブルなので、その隣に玲、向かいにコーマが座ってやっと全員分の席が確保できた。

(・・・なんか、すっげーキンチョーする・・・)
先ほどから、何か圧力のようなものを玲は感じていた。
前に同じ感じを受けたことがあるような気もするのだが、何だったか思い出せない。
しかもそれが気になって手元がおろそかになってしまうのだ。
せっかくの料理も満足に味わえないではないか。
・・・それでも、食べる口はしっかり動くのだが。
(何だったかなー・・・)
「・・・あなたも、大会に?」
不意に、葵夏が口を開いた。
不意に、というのも、思えばさっきから誰も口をきいていなかったのだ。
葵夏は普段からおしゃべりが好き、というよりも気まずいので沈黙が嫌いだった。
かといって同じテーブルについている者を無視して身内で話し込むのも嫌だったので、
とりあえず無難な質問でもしておこうかなー、と思った次第なのである。
これは、青年ばかりでなく仲間たちをも驚かせたのだが、
「一応な、」
と、青年が(愛想はなかったが)嫌そうな風でなく答えたので、
一同の内の気まずい雰囲気は少しほぐれた。
そして、玲の感じていた妙な感じも少しゆるんだ。
そうだ、この感じは・・・
「じゃあ、レイ兄貴のライバルだな。」
次に口を開いたのはコウだ。
「レイ、」

「あっ!!!」

「「「!?」」」
突然の玲の大声に、食堂にいるほとんどの人の視線がこちらに集まった。
「え、あー、ゴメンナサイ。」
「どうしたんだ、玲。」
照れ笑いを浮かべてぺこりと頭を下げる玲に、愁が問いかける。
「いや、この感じ、何かに似てると思ったらさ、
 ししょーの元軍人パワーにソックリなんだよ。」
その言葉に、青年の瞳が少し揺らいだ。
もっともそれに気付いたのは、向かいのコーマぐらいだったが。
「・・・『元軍人パワー』?」
「ほら、ししょーってなんか威圧感?あっただろ。
 何か、そんな感じがビシバシ来るんだよ。プレッシャーっていうのかな・・・」
「レイ、そんな事言ったら・・・」
失礼だよ、と、小声でリィールが注意する。
大会前の戦士が気を張り詰めさせているのは当然なのだから。
しかも、玲の隣にはその大会参加者がいるのだ。
しかし、当の青年はその声を聞きつけて
「いや、構わない。」
と短く言った。
「それに・・・」
言いかけて、立ち上がる。
いつの間に食べ終わったのか、食器は既に空だ。
「『元軍人』、というのは、否定できないからな。」
「え・・・?」
あっけにとられた七人に背を向けて、青年は会計に向かった。






















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