「いっけータロサ!」
「ガウーッ(溜め) ガーッ!(発射)」
5人が追い付いた時に見たものは、
「・・・なぁコーマ、」
「・・・何ですか?」
「何だアレ」
「私に振らないで下さいよ・・・」
どうにも形容のしがたい戦闘の場面だった。
何故か緊張感の微塵もない姿のタロサが魔物を次々に倒している。

※説明しよう!
 タロサは火を吐くことができ、それは見るからに弱々しい火の玉なのだが、
 敵に当たると勢い良く燃え上がるのだ! byコウ・ラスプ

「ちょっと、あれ・・・!」
皆は葵夏が指差した方向を見る。
ずしゃっ・・・という音と同時に魔物が倒れ、返り血を浴びた男の子が立っていた。
「あの子・・・人間?」
葵夏がそう言うのも無理はない。男の子の耳は頭の上に、所謂ネコ耳の様に生えており、尻尾まであるのだ。
しかしそれを見たコーマは納得した様に息を吐き、言った。
「キナツ、それは失礼ですよ。あの子は人狼族・・・
 確かにヒトではありませんが、森の奥深くで暮らしていて、
 ヒトには全く危害を加えませんが、交流も持たないと言われている種族です。
 ・・・しかし、何故こんな人里近くに・・・?」
「ぼく達はこの森にすんでるの」
いつの間にかすぐ近くに寄って来ていたコウが言った。
「でも3ヶ月くらい前に一族が魔物に襲われて、みんな・・・
 カウの町のひと達はぼく達にも優しくしてくれるから、
 ぼく達はこの町の周りのモンスターを退治してるんだ」
「ってことは、コウも人狼族なのか?」
コウには狼の様な耳と尻尾は見当たらないことを気にしつつ、玲が尋ねる。
そうだよ、とうなずくコウ。耳と尻尾は隠すこともできるのだそうだ。
「じゃあ、ここの人狼族はあの子とコウの二人だけなんだ・・・」
言ってしまってから、玲の顔が少し蔭る。他の4人もうつむき加減だ。
しかしコウとタロサは一向に気にしていない風を見せた。
「ガウガウッ(タロも人狼族だよ)!」
「?」
「タロサもいちおう人狼族なんだ」
「ガウ〜(『いちおう』じゃないよ〜)」
「アハハッ、ごめんごめん」
「??」
どうやら人狼族同士にしか通じない言語(?)があるらしい。
旗から見ていると子犬とじゃれる少女にしか見えないのだが、会話が成立しているようだ。
「おい、コウ、誰だそいつらは・・・」
「あ、アニキ」
さきほどの男の子が近付いてきた。
かなり警戒しているらしく、四人を、特に玲と愁を睨むような目で見る。
「アニキ、このひと達は旅の途中で、カウの町によりたいんだって」
「・・・そんなの信じられるもんか。
 こんな時に旅なんてするやつはいない」
「アニキ!」
コウが初めて困惑の表情を浮かべる。
確かに、警戒されるのも道理だろう。ヒトの振りをした魔物がいないとも限らないのだ。
だが、今日はカウの町に宿をとらなければならない。
引き返す訳にはいかないし、次の町まではだいぶあるのだ。
「信じられないのも無理はありません。
 しかし、私達は先を急がなければならないのです。
 一晩だけでも、泊めて頂けませんか」
「港町コルパから魔物が出現しているらしいんだ。
 オレ達はそこに行って、異変を食い止める。それがオレ達の目的なんだ」
「・・・魔物が・・・そこを潰せば敵の数が・・・
 ・・・名前、まだ言ってなかったな。
 オレはウルフ・ラスプだ」
玲達の言葉を、彼も受け入れてくれたらしかった。
「町に行くんだよな、案内するよ」
「ガウ!(するよ!)」
戦闘きって歩き出したコウとタロサについて、一向はウルフに自己紹介しながら町へと向かった。
玲は人狼族に興味があるのか、目をキラキラさせてウルフの隣を歩いている。
逆にウルフは人と一緒にいることに慣れていないのでぎくしゃくした感じである。
コウは兄を良く思っている(?)玲の隣を行くようになり、
お姉さん的なリィールや葵夏、あまり年齢の変わらない(様に見える)コーマにもすぐに馴染んだが、
愁のことだけは何となく苦手なようだ。
そして、愁は―――

「おーい、愁ー、」
玲が愁の顔を覗き込む。
カウの宿屋。二階の一室のベッドの上に二人は座っていた。
魔物を減らしたい、というウルフとコウの兄妹も、明日から五人に同行することに決まっていた。
もっとも二人は
「人が集まる所は苦手だ」
と言って、明日の朝町の入り口で落ち合う約束をした後、いつもの寝床へと帰って行ったのだが。
コーマ達三人は食料の買出しに行った。二人は荷物番である。
「しゅーうー??」
「ん、ああ、何だ?」
「お前やっぱさっきから変だよ」
「そうか?」
・・・自覚ナシかよ。
「・・・コウのこと、か?」
「多分な」
「コウもウルフも、なんでか愁のこと苦手っぽいもんなー」
言うと愁は苦笑いして、それから小さくため息を吐いた。
「・・・茜、どうしてるだろうな」
「皆心配してるかもな・・・」 


















 
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