「さて、またも『イベント』のようですよ」
「???」
そろそろ歩き出そうとしていた四人は、またもコーマの突然な発言に首をかしげた。
―――否、三人、だった。何故なら
「そうだな」
と言った者が一人いるから。
「愁?」
「『サーチ』の魔法を使っているんだ。
 人や魔物が近くに来たら分かるようになってる」
「じゃあ、何でリィールのことは分かんなかったんだよ」
「『ハイド』で気配を消していたの」
玲の問いにはリィールが代わりに答える。
と、その時、五人の前方に飛び出して来たモノがあった。
「ガウッ」
「!!!」
魔物かと、皆が一斉にそちらを見ると、
「ガウガウ」

・・・・・・変な犬が吠えてる・・・・・・

皆がそう思ったのも無理はない。
灰色の短い毛に覆われた、膝くらいまでの体長のソレは、
頭こそイヌ科のソレに似ているが、短い二本足で直立し、
多めに見積もっても二頭身の可愛らしい体つきで口を無駄にぱくぱくさせて吠え立てていた。
あっけに取られていると、女の子が走ってきた。
「タロサ!」
「タロサ??」
玲が思わず繰り返す。
女の子は先ほどの犬(ということにしておく)を抱きかかえる。
その姿を、愁は呆然と見つめて呟いた。
「・・・茜?」
「へ?茜ちゃん?」
それを聞いた玲も女の子を見る。
すると、確かにその子は茜にそっくりだった。
ただしその髪は、日本人にあるまじき群青色。
コーマの紫の髪といい、リィールの青い髪といい、この世界の人々は髪色が(玲達にとっては)現実離れしていた。
しかし、それにしても似ている。二人して女の子を凝視している横から葵夏が覗き込んだ。
「ねぇ、茜って?」
「あぁ、茜ちゃんは愁の妹だよ。
 この子にそっくりなんだ」
未だ開いた口が塞がらない愁に代わって玲が答えた。
「ぼくはアカネって名前じゃないよ」
不思議そうに女の子が言う。その声も、茜とまったく変わらない。
「ぼくの名前はコウ。コウ・ラスプだ!」
「ガウ!」
「こっちは狼のタロサだよ」
「ガウ」
「そっちは?」
何の屈託もなく訪ねる女の子。
一同は(愁を除いて、だが)ちょっと顔を見合わせたが、敵のスパイには見えないのでコーマが最初に口を開いた。
「勘違いしてしまって申し訳ありません。
 私はコーマ・ガゼロッタといいます。そして彼女がリィール」
リィールが軽くお辞儀する。
「んでオレは玲」
「あたしは葵夏っていうの」
・・・愁はコウを見てぼーっとしている。
「・・・こいつは愁だよ」
またも代わりに玲が言った。どう見ても愁は何も言えそうにない。
(どっか壊れたか?)
などと玲が失礼なことを思った時、
「!ガウガウゥ!!」
タロサが猛烈な勢いで吠え出した。
「北!?よしっ、行くよタロサ!」
「ガウ!」
くるりとターンする一人と一匹。
「北?北になにかあるのか!?」
とっさに玲が訊いた。
「モンスターが2ひきーーっ」
叫びながら走っていって、あっという間に見えなくなってしまった。
体は小さいのに驚くべきスピードだ。
「あちらは・・・私達の向かっているカウの町の方ですね」
コーマが二人(?)の向かった先を見て言う。
「じゃあ、町に魔物が・・・!俺達も早く行った方が!」
「そうですね、行きましょう」
愁の言葉にうなずくコーマ・・・
「・・・って愁!いつの間に!?」
(今までボーっとしてたんじゃ・・・)
驚いている間に愁は走り出していた。
玲達もそれに習い、最早姿の見えないコウとタロサを追って走って行った。
 
 


























  
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