「さっそく始めるぞ」
「オス!」
「はーい!」
「では、私達も」
「はい」
開けた場所・・・普段は村の兵達の訓練場らしいが、そこに玲、愁、葵夏、コーマ、ダラスの五人が集まった。
これから特訓なのである。

あの後、まだ愁と葵夏の武器が決まっていなかったのでもう一度地下の武器庫を見に行ったのだった。
葵夏は休ませておこう、という事になったのだが、彼女は自力で後から地下へ来て、
「私も戦う」
と宣言したのだ。
結局、ソフト部ピッチャーの葵夏は投げナイフやクナイの様ないわゆる仕込み武器を、
頭脳派の愁はコーマの勧めで魔法を、それぞれ使う事にした。
(魔道書は武器庫ではなく二階の書庫にあるので、それを選びにわざわざ二階まで上がった。)

そして一夜明けた今日から特訓である。
主に基礎を学んだ。玲は構えや体さばき、素振りなどである。
もともと運動神経は良いし、何より本人が楽しんでいた。
最初は木刀での稽古だったが、最後には上達ぶりを見込まれて(そして頼み込んだかいがあって)
本物で剣を使わせてもらったのだった。もっとも、アリューシャンではなかったが。
愁も簡単な魔法のメカニズムを聞いた後、基礎中の基礎、物を動かす練習から始めた。
始めは転がすように動かし、次は円を描くように。だんだんと速度を速め、浮かせたりもした。
夕方には練習用のボールを自在に操れるようになった。
葵夏の場合、部活で鍛えた右腕のおかげで投げることにはすぐ慣れた。
ただ、目標に当てることは出来ても刺すことは難しく、
一日中ダーツをやって二つに一つ成功するようになったと思ったら日が暮れてしまった。

コーマの屋敷に戻ると、使用人に風呂に通された。
・・・しかもしっかり男性用、女性用に分かれている。
「流石だ・・・」
「・・・確かに」
「スッゴーイ」

「ハーーーーーァ。楽しかったーーー!!」
「・・・疲れた、の間違いじゃないのか」
湯船に使ってのびのびとしている玲に、呆れ顔の愁。
「そりゃちょっと疲れたけどさ、でも楽しかった!」
ニコニコ顔で答える玲。
「魔法ってそんなに疲れるの?」
不意に、葵夏の声が聞こえた。思わずビクゥッと体をこわばらせる二人。
「こっちまで聞こえてるよー。驚いた?」
また、葵夏の声。
「魔法は、精神を媒介にするからな。
 呪文によって精神力と魔力を同化させ、高めて、それを声によって放出して術を使うんだ。
 集中力もいるし、不慣れだと余計に疲れる」
「ヘェ・・・何か難しそーだな」
「ホント」
感心しあう玲と葵夏。
(でも、)
玲は思った。
(やっぱ、愁だから出来るんだよなー)
愁が魔法を使う、と聞いたとき、玲はピッタリだと思った。
昔から、自分がゲームのキャラだったら剣士か戦士、
愁だったら魔導師かガンナー、と(勝手に)考えていたのだ。
「コーマも褒めてたよね。飲み込みが早いって」
壁の向こうから葵夏が言う。
「そうそう。やっぱ愁はすげーよな」
言いながら、玲は愁にバシャバシャお湯をかけた。
「ちょ、やめろって。お前だってスジが良いとか言われ、うわっ、」
抵抗しながら愁が言う。普段冷静なヤツをからかうのは面白い。
さーて、そろそろ髪でも洗うかな、と、玲は湯船から上がりかけ・・・
「アレ?」
「どうした」
「シャンプー、ないんだけど。石鹸はあるのに。」
「ああいう化学製品は、ここにはないんじゃないか?」
「写真はあったぜ」
「全部一緒だと思うなよ」
愁はまたしても呆れ顔だ。・・・そう、だよな。ここは日本とは違うんだよな。
なんて、ちょっと感傷にひたっていた時、葵夏が大声を上げた。
「ウソォ!?ってことはもしかして、メイク道具とかも何にもないのっ!?」
「・・・鉛が原料のならあるんじゃないか?」
「そんなぁ〜〜・・・」

その後は夕食(豪華)をとったり、お互いの世界について(だいぶ違う)を教えあったりしてから、早めに床についた。
なんと一人一部屋が与えられていた。
・・・流石だ。
































 
 
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