「郁野、だいぶ落ち着いたみたいだ。
・・・それにしても玲、お前よくあんなの倒せたな。ってオイ玲!聞いてるのか!?」
愁の声に、ハッと我に帰る。何だか今までボーッとしていて、ただ魔物の残骸が片付けられるのを見ていた。
「ああ、聞いてるよ。」
「その剣、よく使えたよな。」
「ん〜〜、使ったっていうか、使った事があるっていうか・・・
もしかしたら、アリューシャンが教えてくれたのかも?」
「お前何言いたいのか理解不能だぞ。」
「オレだって分かんねーんだもん。」
などと話していると、コーマとダラスが近寄って来た。
「こちらは、私の旧友のダラス・サーウィン。アリューン村の兵達をまとめている、元軍人です。」
コーマに紹介されて、ダラスは軽く頭下げる。
元軍人ね、と、玲は思った。左目の下に傷跡がある。結構古そうな傷だが、年齢は20を少し越している、という程度に見えた。
「ダラスだ。」
「玲です。」
何故か丁寧語になる玲(元軍人パワー?)。
「愁です。向こうで座っている・・・今こっちを向いたのが、葵夏。」
「ブッ・・・」
「何だよ玲。」
「だってお前今『葵夏』呼びして・・・?」
「俺達が下の名前なんだから、『葵夏』のほうが良いと思ってな。」
あぁ、ナルホド。
「それで、それが例の『封印の剣』か?」
ダラスが尋ねる。それが、コーマに向けられたものなのか、自分に向けられたものなのか分からなかったが、とりあえず玲は
「そうです」
と答えた。
「封印の獣はどうした。」
「あ、」
「『あ』?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ああ〜〜〜っっっ!!!そういえばあの時、放り出して来たかもっ!!」
「なっ・・・!?」
三人とも、何というコトを、という顔で玲を見る。
「俺、取りに行って来る!」
と、コーマの屋敷の扉を開くと、

もふっ

と何かに顔がぶつかった。
良く見るとそれは
「アリュー!?」
そう。『封印の獣』ことアリューシャン、改めアリューである。しかも空中に浮かんだまま気持ちよさそうに眠っている。
一瞬場がシラケたが、気を取り直してアリューをかかえ、向き直る。
「はい、アリューです。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
やっぱりシラケた。
「何でここにいるんだよ。」
愁のツッコミが、余計に空気を寒くする。
「ああ〜、まぁ良いじゃん。ホラ、気持ちよさそうだし。
・・・きっと、剣の方のアリューシャンについて来たんだよ。」
何とか場を取り繕おうとする玲。
ふう、と、ダラスが溜め息をついて言った。
「まあいい。それより玲。」
まじまじと玲の顔を見る。
「な、何でしょ・・・??」
(俺、何か悪いことしたか??)
一瞬おいて、ダラスが口を開いた。
「剣の使い方がなっていない。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ハ、ハァ。」
でもしかたない。言いかけて、玲は言葉を飲み込んだ。
剣なんて使ったことなどない。魔物どころかクマやウサギでさえ野生のものは見たことがない。
自分達の世界・・・少なくとも、日本の、浅野市の、どうしようもなく平和な世界ではそれが普通であり、むしろこの状態の方が異常なのだ。
しかし、ココでは違う。
コーマは何て言ったっけ?『伝説が再び甦る』
俺達が何だって?『異世界から現れし者、この世を正しき姿へと変え、』そして『光は闇の中を照らすだろう』
俺達は何て答えた?『お前は、どうしたい』『行くって言ったのよ』―――『行きます』

「どうすれば、強くなれる?」

気付いたら、そう言っていた。言った後で思った。やるしかない。やらなきゃいけない。
『レイ、今から汝が我が主だ』―――俺が、俺達が、何かしないといけないんだ―――
ふっと、ダラスが笑った。
「良い目だ。」































 
 
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