「ダラス!」
コーマの屋敷を出て、三人は絶句した。
巨大な・・・何というか・・・グロテスクな魔物が六対、屋敷を取り囲んでいる。
ダラスと呼ばれた剣士が、敵を牽制しながらこちらへ向かって来て言った。
「奴等、どんどん増えていくんだ」
見ると、弓を背(と言っていいものかどうかも分からないが、背面)に立てたまま、一体の魔物が三対に分裂している。
他の兵達も必死で戦っていたが、むしろ敵は増える一方で、あちこちで負傷した兵士が倒れていた。
「あれは・・・ゼライオラス!核を突かない限り増殖を続けます!」
コーマが叫ぶ。
「あの形状からして、おそらく核は、」

「きゃああああぁぁぁっっっ!!」

その言葉の途中で、葵夏の悲鳴が響き渡った。玲達や兵、そして魔物達が一斉に注目をよせる。
「な・・・何なのよコレェ!」
「お、おい郁野!そんな大声、」
「危ないっ!」
急に、視界に岩石のような巨大な物体が迫ってきた。魔物の爪だ。
それと葵夏の間にダラスが入り込み、爪を剣ではね返す。
「お前達は下がっていろ」
ダラスが、尚も襲い来る爪を受け止めながら言った。
愁が葵夏に駆け寄り、へたり込んだ葵夏を助け起こす。
「郁野、こっちだ。大丈夫か?」
背を支えられ、何とか葵夏は歩き出す。
その間、コーマは何やら小声で唱えていたのだが、素早く右手を魔物の一体に突き出した。
「イラプション!」
叫ぶと共に、指差す形に立てられた右手の指の先が光る。
すると魔物の周りに炎が生じ、同時に体内からの爆発が起こって、ようやく一体が動かなくなった。
一つ息をついて、コーマがダラスに告げる。
「核は、右腹部にあります。ただ外皮が相当硬いので、」
「弱点が分かれば平気だ」
断言してダラスが駆けた。
剣を構え、魔物の手が振り下ろされるのと同時に跳ぶ。
刹那、魔物も右わき腹―なのかどうかはよく分からないが、
コーマが爆破したのと同じ場所だった―から大量の血が吹き出した。
その一体が倒れるより早く、ダラスは次の敵と対峙している。コーマも魔法を連発し、見る間に敵は減っていった。
玲や愁は、ただそれを呆然と見ているだけだった。玲など、その手に剣を握ったままだというのに。
・・・いや、むしろ動けなかったのだ。二人の動きが完璧に見えた。
そして葵夏は目を背けたままだった。

最後の一体は地に伏す寸前、玲は足元で何かが蠢くのを感じた。
次の瞬間、地中から跳び出した『何か』によて、玲は弾き飛ばされていた。
「玲!」
愁の声と、その『何か』・・・ゼライオラスとは違う魔物の咆哮とが重なる。
ダラスが駆け、コーマは呪文を唱え始める。・・・だが、間に合わない!
思わず、玲は地下から握り締めたままだった剣―アリューシャンで、魔物の攻撃を受け止めた。
その時である。玲は不思議と温かい感覚に包まれた。
剣が軽い。
見ることさえ初めてだった剣を、アリューシャンを、意のままに操れるような気がしてきた。
いや、そうではない。まるでずっと昔からアリューシャンを手にしてきたかのような、
あるいは何かが、自分を導いてくれるような・・・そんな気が、した。

剣を高く構え、一気に振り下ろす。

それだけだったのか、もっと複雑な動きだったのか、玲には分からない。
とにかく気が付くと魔物は頭を割られ、息絶えていた。
「どうやら、今の魔物の核は頭部にあったようですね」
というコーマの声が、妙に頭に響いた。
































 
 
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