蒼樹 玲の朝は早い。別に部活があるワケでもなく、日直なワケでもない。
その原因は玲の幼馴染の萩原 愁にある。朝に強いらしい愁は、玲を起こしに来るのだ。決まって理由のない時に限って。
その日も玲には用事がなく、何時もと同じように起こしに来たのだと思っていた。・・・愁の話を聞くまでは・・・

「”てぃあり〜ている”って、何それ」
愁が呆れた様に
「お前、どういう読み方してんだよ」
と言う。
「こうゆー読み方」
悪気もなくにこりと笑う。愁が眉を顰めた。
「まっ冗談はいいとして、オレはそんなゲーム知らないよ」
「お前が知らないとなると自作か?」
「わかんねぇよ其処までは・・・」
其処で言葉を切り、何か思い付いた様にじっと愁を見る。
「な、なんだよ」
不安を感じつつとりあえず訊いてみる。不安になる理由は単純明快。玲が眼をキラキラと輝かせて見ているからだ。そして、にやりと笑う。
「本当にオレが知らないかどーか調べてやるよ。ってコトで今日、お前んち行くから」
「え、ちょっと待て」
愁の制止も聞かずに一人納得する玲。
「オッケーオッケー、じゃあ学校終わったら直ぐ行くって事で決まりね」
(そんな面白いモノ、ほっとけるわけないじゃんか♪)
元々好奇心の塊の玲。ましてや今回はゲームの事である。無類のゲーム好きの彼がほっとくワケがない。
「それにパソ使えなくて困ってるーって言ったじゃんか。ま・さ・か、その儘でいいわけー?」
白々しいにも程がある、と言わんばかりに睨み返す愁。しかし、玲は特別気にした様子もない。それどころか楽しげである。
ふぅと溜め息をついて、諦めた口調で愁が言う。
「分かった・・・ただし委員会があるからその後で・・・な」
おっしゃ〜!と玲は心の中でガッツポーズをしてしまう。愁は一度約束したら守る。どんなものでも。
はたと気付いた。
「あっ、そう云えば愁って委員長だったような・・・」
玲の独り言に愁は苦笑いを隠せない。
「なりたくてなったわけじゃないんだけどな」
そう云えばと、LHRを思い出す。あの時は満場一致で委員長に愁が決まった。
もちろん玲も愁に投票した。今迄ずっと一緒だったから、愁の性格は良く知っている。
愁は嫌そうだったが結局引き受けたと云うわけだ。
ぽんと肩を叩く玲。
「がんばれ委員長!」
驚いたカオをする愁。すぐに笑って言う。
「ああ」
「よし」
何が『よし』なのかと愁は思った」が、言わなかった。
否、言う暇はなかったのだ。時計が7:40を告げる。
愁の顔が青くなる。何時もなら余裕で間に合う時間だろう。しかし、今日は終業式。
彼らの学校、浅野県立浅野台高等学校(通称浅高)は、終業式等の類は登校時間はかなり早いのだ。
つまり8:00から。
「走れ、遅れるぞ!!」
「へっ?」
「『へっ』じゃない『へ』じゃ!今何時だと思ってるんだ?」
愁のイライラが募る。対照的に玲はあくまでマイペースだ。
「何時?」
「7:40だーーーっ!!!」
愁が絶叫した。玲の顔色も変わる。
「えっウソ、マジ?ヤバッ!」
ダダッと走り出す2人。何方からともなく不満の声が上がる。
「何でもっと早く気付かないんだよ!」
「お前だって時計持ってるだろうが!!」
「だいたい愁から相談持ちかけたんじゃん」
「お前が歩くの遅いからこんな事になったんだ!」
ギャアギャアと文句を言いながら走る2人。
それは校門を潜るまで続いた。
























 
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