夜が自らの重さで天に沈んで

               写ろう睡蓮の焔の花弁が綻び始める曙に、

               柔らかな大地の上で

               私は彼の声を聞いた。


                  玻璃結晶が擦れ合い奏でる様な

                  銀鼠の乾いた音階で

                  頬に触れる

                  揺らめく逆さまの細石


               慈雨の如く鏤められた薫りに身を竦めれば

               睡蓮の花は緩やかに崩れ梳けて、

               張り詰めた世界の含羞んだ片隅で

               私は彼の左の小指に触れた。










                                             お題:架空の君












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