『驢馬の皮』の皮を被って『灰被り』の靴を履き

                  すっかり『美人』に成り済ましたら

                  渋谷の仮面舞踏会に出掛けましょう。

                  赤くなった靴はひとりでに踊りだして

                  金と銀の斧で両足を斬って貰ったのだけれど、

                  私は踊り続けていても良かったわ。

                  だって金貨を産む驢馬はもう殺してしまったのだもの。

                  さて、『肉に塩をかけないお父様』に追い出されて

                  私は一人竹を切り、糸を五つむずつ紡いで暮らしたわ。

                  月と太陽と星のドレスは灰色になってしまって、

                  それでも誰かを探していたのよ。街にいた頃からずっと。

                  だから偶然鏡に映った

                  『雪の様に白くて血の様に赤い少女』に嫉妬したのね、

                  つい、よ。つい、牝牛に変えてしまったの。

                  『勇者』は直ぐに駆け付けて、割った鏡で私を移したわ。

                  まあ、私、こんなに醜かったのかしら。

                  なんて思わなくてよ。私、やっと恋をしたのだもの。

                  でも駄目ね、『逞しい若者』は

                  『捕らわれのお姫様』に夢中なの。

                  呪いが解けた『お姫様』と『若者』は直ぐさま式を挙げ、

                  二年も経たずに離婚したわ。

                  ああ、やっぱり『美人』じゃないと駄目なのね。

                  『巻き毛王子』も『お馬鹿な美女』を選んだのよ。

                  いっそこの義足を尾鰭に替えて、海で暮らしてみようかしら。

                  『さかなびと』達は裸で生きると云うわ。

                  岩の上で唄っていれば、『船に乗った優しいお方』は

                  私に気付いて呉れるでしょう。

                  それとも死人になってみれば、その儚さに感動した『お方』が

                  私を連れて帰って呉れるかしら。

                  そう思って最後に残った毒の林檎を齧ってみたの。

                  一口齧ったら暖かい暖炉が見えて

                  二口齧ったら『お城のお父様とお母様』が見えて

                  三口齧ってもちっとも死ねないものだから、

                  仕方なくまた糸を紡ぎ始めて、気付いたわ。

                  まず紡いだ糸と灰色のドレスで立派な花嫁の装束を

                  そして新しく拵えたプラスティックの靴を用意して、

                  林檎に塗った毒を糸車の針に塗るの。

                  ああ、丁度百年後に現れた愛しい私の『王子様』は

                  私を愛してくれるのかしら。

                  私を愛してくれるのかしら。

















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