これは美しき花による手向けではなく、美しき花に手向ける言の葉です。 貴女の視た世界は美しかったですか。 神様は見つけられましたか。 貴女は私の認識する限り間違いなく存在していたわけですが、 貴女の問うた存在の幸福の有無の答えは得られましたか。 こればかりは私には答えられないのですよ。全て貴女が決める事ですから。 仰る通り、私は貴女を忘れません。 たとえ思い出しは出来なくなったとしても。 だって貴女は私の認識する限り、生きていたのですから。 間違いなく。 藤色の波が通り抜ける。 貴女が戦いに負けたとは思いません。 それはヒトの辿るただ一つの運命。 それが生物の辿るただ一つの運命。 戦いはこれからも途絶えなく続く事でしょう。 貴女の生きた世界の上で。 藤色の波が降りしきる。桜の花と共に。 実を云うと私は未だ貴女の顔すら覚えていないのです。 最後の物語の十一行目に貴女の名前を必死で差し入れた、 あの冬の終わりの記憶しか残っていないのです。 それでも。 支配の要らない楽園に辿り着きましたか。 時間の要らない楽園に辿り着きましたか。 おやすみ、最後すら愛されたウィスタリア。 貴女はきっと美しかった。 きっと幸福だった、とは、私には云えないけれど。 藤色の波が舞い上がる。桜の花と共に。 暁に凛として響く物語。 貴女は美しかった。 これは美しき花による手向けではなく、美しき花に手向ける言の葉なのです。 おやすみ、間違いなく存在したウィスタリア。

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