1 出逢い<リンク> 闇が招かれた深夜。 彼は、古びた屋上に居た。淀んだ空気のせいで見えない星を探すように上を見上げている。 「何処にいるんだ・・・?」 彼は人を探している。 その人に逢うために此処まで来たのだった。 「まさか見つかんなかったりして・・・」 脱力したように傍の手すりにつっぷす。 不意に勢いよく顔をあげ、 「いいや、この荒東輪向さまに不可能はなーい!!!」 彼、荒東輪向が叫ぶ。 それから癖のない黒い前髪をかき上げて、笑う。 「さて行きますか」 彼の呟きは闇に溶けた。 ピピピピピピピピピピピピピピッ。 目覚まし時計がけたたましく鳴る。が、ベットの中の人物は短い唸り声を出すだけで起きるようすは無い。 と、そこに。 「りろん!!!」 怒鳴り声と共にドアが勢いよく開く。入って来たのは短めの髪の少女だ。 「うー、真沙乃ちゃん・・・?」 寝ぼけ眼でベットの中の人物こと向羽りろんが起き上がる。 「目覚まし時計が鳴ってたからまさかと思ったんだけど・・・案の定、だったみたいね」 呆れたように真沙乃が言う。 「なんでここに・・・?というか不法侵入・・・」 「まったく、いい加減1人でおきなさいよ」 「だから不法侵入・・・」 「起こしに来てあげたんじゃない。そ・れ・と・も、遅刻したかったわけ?」 「・・・・・・」 そう言われるとなにも言い返せない。すごすごとベットから降りるしかない。 「それじゃあ、外で待ってるから。早く来なさいよ」 そういい残し出て行く真沙乃を見送ってから、りろんは溜息をついた。 (あいかわらず、なんだから) そういう自分も変わらないか、と小さく笑う。 制服に着替えながら不意に机の上を見つめる。其処には宛名に『RIRONN−MUKOU』と書かれた灰色の封筒が置かれている。 (今はどの辺にいるんだっけ・・・?) 彼女の両親は有名な科学者で世界各国を飛び回っている。その為、めったに帰っては来ない。 (今度帰ってきてくれるように書いてみようかな・・・) りろんの考えは其処でスットプする。何故なら「りろんー!!」という怒鳴り声が聞こえてきたからだ。このままじゃ近所迷惑に成り かねない。 急いで全てを終わらし、部屋を出る。途中振り返り、ベット脇に在る写真に、 「いってきます」 その声と共にドアが閉まった。 放課後、りろんは部活に出ていた。彼女は真沙乃と共に高校の演劇部に所属している。文化祭が近い為、練習も遅くなってしまう。 「うー、外暗いよ・・・」 りろんは暗いのと恐いもの(お化けもその一つ)が嫌いだった。夜の闇は何か居そうで恐い。頼みの綱の真沙乃は用事が有るらしく、早々に帰 ってしまっていた。 (恐い・・・でも帰らないと・・・) このままこうしてるわけにもいかない。 意を決し、歩きだす。なるべく電灯の下を。 歩き出してから約10分、馴染みの公園に着く。ここを突っ切ればりろんのマンションまですぐである。 ほっと安堵の溜息をすると、公園に足を踏み入れる。少し歩くとりろんは異変にきずく。 誰かに付けられているのだ。 (何で・・・?) 最初は気のせいかと思った。だが、りろんが歩けば相手も歩き、りろんが止まれば相手も止まるのだ。これは付けられているとしか 考えられない。 不意に。 「向羽りろんさんですね」 目の前には黒スーツの男が2人。 「あなた達は誰ですか」 緊張した面持ちでりろんが問うが、 「我々と来てください」 問いに答えずそう言うとりろんの腕を掴む。 「ちょ、ちょっと!離してください!!」 「いいから来るんだ!!」 もみ合いになるが、所詮女と男の力の差は歴然だ。その上向こうは2人である。勝てるはず、無い。 必死の抵抗むなしく、りろんは抱き上げられてしまう。もうだめだ、と諦めたその時。 「女の子に対してそれは無いと思うんだけど」 「!?」 「誰だ!」 声のほうを見ると一人の少年が立っている。歳はりろんより一つ二つ上だろう。 「まず自分が名乗れ、よっ!」 少年の蹴りがりろんを抱き上げている男に入る。バランスを崩し、りろんが放り上げられたのをすかさずキャッチする。 「あなたは・・・?」 「説明は後。とりあえずこいつらなんとかすっから」 ウィンクを一つりろんによこすと、少年は男達に向かって行った。

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