ヱロスは激怒した。必ず、かの邪知暴虐の王のスカートを覗かねばならぬと決意した。
ヱロスには政治がわからぬ。ヱロスは村の変人である。口笛を吹き、村の女と遊んでいた。
ヱロスには両親はいない。女房もない。十六のムッツリな妹と二人暮らしだ。
この妹は、近々村の牧人と結婚することになっていた。
ヱロスはそれゆえ、花嫁のコスや祝宴のごちそうやらを買いに、はるばる町にやってきたのだ。
<<中略>>
「王様は人を殺します。」
「なぜ殺すのだ。」
「皆が自分のことをブスだと言っていると言うのですが誰もその様な事は言っていません」
「たくさんの人を殺したのか」
「はい、初めは王の妹婿を。それから御自身のお世継ぎを。それから妹様とそのお子さまを。それから皇后のツンデレラ様を」
「何為れぞ去らざるや」
「苛政無ければなり」
「あきれた王だ。生かしてはおけぬ」
ヱロスは単純なヲトコであった。買い物を背負ったままで、のそのそ城に入っていった。
たちまち彼は、巡邏に捕縛された。ヱロスの懐中からは油性マジックがでてきたので、騒ぎが大きくなってしまった。
「この油性マジックで何をするつもりであったか。言え!」
暴君ディオニスは言った。その王の顔は蒼白で、眉間のしわは刻み込まれたように深かった。ぶっちゃけ…キモかった。
「町を変態の手から救うのだ」
「何を言っておる。このペンでわしの顔に落書きしようと思ったんだろ」
この様な言い争いが数分続き、ヱロスは三日の執行猶予をもらい妹の結婚式を見る為に村に戻ることを決意した。
竹馬の友のセクハラティウスを人質にして。
ヱロスはその夜、一睡もせず十里の道を急ぎに急いだ。
村に到着したのは明くる日の午前、日すでに高く昇っていた。ヱロスはよろよろと家へ向かった。
ヱロスが家の戸を開けるとなんとそこには愛の営み(ナンダヨソレ)をしている妹とその婚約者がいた。
ヱロスはカルチャーショック(?)を受け
「…オジャマシマシタ。」
とだけ言い静かに戸を閉めた。
ヱロスは妹の結婚式のことなどすっかり忘れており無心に城目指して再び走り出した。
そろそろ全里の半ばに到着したころ、なんと川が氾濫していた。
ヱロスは一瞬戸惑ったが、やがて神に祈りをささげると「ひで泳ぎ」(今度説明します)をし始めた。
押し流されつつも、見事、ヱロスは川を渡りきった。
突然、目の前に一隊の山賊が躍り出た。
「待て。持ち物をすべて置いていけ。」
「私は何も持っていない。あるのはこの命だけだ。その命もこれから王にくれてやるというのだ」
「その命が欲しいのだ」
「まさかおまえら……俺のファン?」
「バレてしまったか!そうだ俺はお前が欲しい!(cぷよぷよ)」
「悪いが私は既に王のものなのだ…」
山賊は皆ショックで倒れこんだ。
ヱロスはしつこくキッスを求めて来る山賊どもを殴り倒し、さっさと走って峠を下った。
しかし、さすがに疲労してついにがくりとひざを折った。立ち上がることができぬのだ。天を仰いで、
「オゥ、ジーザス」
と、悔し泣きに泣き出した。もう、日本などどうでもいいという、変態に不似合いなニート根性が、心の隅に巣くった。
ジーザスも照覧、私は精一杯に努めてきたのだ。
あぁ、セクハラティウス、私は君を愛していた。しかし、男が男を好きだなどとは言えなかったのだ。
君の口からかぐわしい吐息が漏れるたびに、私の胸は高鳴っていたのに。
あぁ、愛と真実の悪を貫くラブリーチャーミーな…
否、愛と真実の血液だけで動いているこの心臓を愛するセクハラティウスに見せてやりたい。
しかしこれが、私の運命なのかもしれない。セクハラティウスよ、許してくれ。
<<中略>>
ふと耳に、水の流れる音が聞こえた。岩の裂け目から清水がわき出ているのである。
水を両手ですくって、一口飲んだ。すると、少し塩辛い。なぜだろう、ここは河口付近なのだろうか…
頭を上げると、王が上流の方で立ち〇ョンをしていた。ヱロスは水を吹いた。
何はともあれHPとPPを回復したヱロスは、再び走り出した。最後の死力を尽くして、ヱロスは走った。
そしてヱロスは刑場に突入した。ついにはりつけ台に上り、セクハラティウスの白魚のような美しい足にかじりついた。
「セクハラティウス。」
ヱロスは涙を浮かべて言った。
「私にキッスをくれ。お願いだ。私はここまで君への愛ゆえに頑張った。君を愛している。」
セクハラティウスは全てを察した様子でうなずき、思いっきりヱロスにオーロラビームを浴びせた。
効果は抜群だ。しかも急所に当たった。セクハラティウスは言った。
「お前など私の好みではない。私はヲトコだ。私はもっと美しいヲトコが好きなんだ。お前なんか逝ってしまえv」
暴君ディオニスは静かに二人に近付き、顔を赤らめて言った。
「セクハラティウスよ、だったら私ではどうだろう。どうかお前の愛人にしてほしい」
「えぇ、喜んで」
セクハラティウスも顔を赤らめて言った。どっと北の国の民達の間に歓声が起こった。
「マンセー、結婚マンセー」
一人の腐女子…いや婦女子が、緋のマントをヱロスに捧げた。ヱロスはまごついた。
かつての友は、気をきかせて教えてやった。
「ヱロス、君は、マッパじゃないか。このかわいい娘さんは、ヱロスの裸体を見るのが、たまらなく嫌なのだよ」
ヱロスは、ひどく赤面した。