狂気と云う言葉が正常なのは十代のうちだけだ 本を読んだ。 怪我をした女にか好きになれない男の話だった。 女は男の為にまた怪我をすると叫んだ。 俺は彼女の胸の縫い目をみて胸から血を流した。 素でキャンデーホリック 俺はきっと今、飴玉を差し出して呉れた人を好きになる 「想像流血、って、」 立ち読みのサンダルの 親指と人差し指の間から 足の裏から 体重を支える大腿の付け根から 骨盤の辺りから ページを捲る指先から コメカミから 血が流れるのだ。 立ち読みをしていたその本棚の角で俺はもう動けないのだ。 だから俺は鬱にならない。 逢魔ヶ刻をとうに過ぎて仕舞った 空は(有りがちな表現だけど)海の色をしていた 真っ白な 雪の 中で 白い果実が熟れていく妄想 薄皮にくるまれた ふくよかな白い果肉が ずくずく 重みを増していく 刷り込まれた官能 の、 想像 無知と云う言葉に美しさが付加されるのは十代の内だけだ 不条理であること それが俺の真実 自虐はしないし自慰もしない そして俺は鬱にならない 鬱にならないのだと云う妙な自尊心だけは絶対である 「想像流血って知ってる、」 一日に三回ずつゲームオーバーを迎える俺は、 きっと一日に三つの飴玉があれば生きていけるのだ。 一日で三冊の本を読み返す俺は、 きっともう一日で三立の血を流し続けるのだ。 グラスアイのドール が、泣いてる 本棚の上で 閉じない睛 を開けて 開かない口 を閉じて 真っ白な 肌と 髪 は動かない 動かないと泣いてる 動かない その想像は 行為から独立して自由だった そして俺は満月の夜に銃声を聞いた。 吸血鬼 を恋をする夢 を見た少女 になった。 坂道を下りながら、 思う。 今きっと食道から血が出ている。 その血液は肉の間に染み出して骨の周りを湿らせて体の中で行き場をなくし やがて腐って固まる。 しかし誰もそれに気付かない。 ヒステリックに 鋏を自分の脚に突き立てて 薬の代わりに血を啜った 包丁は虐殺されて 窓から投げ出された 切断されなかった指は 其処で前の物語と不意にリンクして きっとあの女なら男の為に 左手の親指くらい呉れてやるのだろうと 思った。 狂気。 「つまり俺が馬鹿だって事なんだけど、」 それは狂気なのか。 飴玉はなくなってしまった。 双子の片方がもう片方を愛するのなんて日常茶飯事で、 ならばそれは狂気なのか。 片方がもう片方を殺す事も日常茶飯事な訳で、 ならばそれも狂気なのか。 否、 所詮物語の日常 それは不条理なのか。 日焼けしてむき出しの ショートカットの首の後ろから 背骨の隙間から 重たい臀部から 糸を抜いた膝の傷から 存在感のない踝から 剥がれない右足の爪から 想像の血が流れるのだ 或いは 想像で血が流れるのだ だから俺は自殺はしないし自傷もしない 当然ながら鬱にもならない 自信がある 絶対と云う言葉を信じて許されるのは十代の内だけだ 本を読んでいた 丑三つ時をとうに過ぎて仕舞った 十代の空は(またきっとやって来るだろう)空の色をしていた 筋肉痛の背中 で 繁殖した細胞が 新たな組織を樹立する 日焼けした 皮膚 を突き破って 真っ白な 翼 が、 血を流す 想像 その血液は自転車のタイヤの跡をアスファルトの上に真っ直ぐ鮮明に残し やがて乾いて罅割れる。 しかし誰もそれを辿っては来ない。 これは狂気ではない きっと今 肺から血が出ている そうだこれは狂気ではない そして俺は坂道を帰るのだ だから、 ではないのかも知れないけれど、 俺はもう、 そんな事如何でも良いくらいに、 鬱ではない。 これだけは絶対。 本を読んだ。 最後には結ばれる話だった。 筈だった。 途中で俺はそれを本棚に戻した。 だって夕食までに時間がなかった。 続きは明日 それまで、 俺、は、 想像の中でだけ繊細な私になる  
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